筋サテライト細胞の増殖と筋肉肥大
筋肉の増強には、筋サテライト細胞(筋線維の幹細胞:筋繊維になる細胞)の役割が重要です。
マウスの実験で筋肉にγ線を照射して筋サテライト細胞の増殖を止めるてしまうと、負荷をかけても筋肉が肥大しませんでした。
筋サテライト細胞は、筋線維と基底膜の間に少数存在する多能細胞で、筋肉になる前の段階で変化を停止し、筋繊維の細胞になるのを待っています。
マウスによる実験では運動負荷を下げると速筋線維周辺の筋肉テライト細胞数が減少し、運動負荷が上げると増加しました。
筋繊維細胞の肥大と増幅のサイクル
筋サテライト細胞は細胞サイクル(幹細胞から死滅までの周期)のうちの休止期(G0期)で留まっています。
G0期から分裂サイクルに入る(増殖のスイッチが入る)と、分裂速度がいくつかのステージで調節を受けながら、分裂を加速させていきます。(増殖の増幅)
分裂サイクルへの移行は幹細胞増殖因子(HGF)によって起こります。(スイッチのオン)
HGFの濃度の変化には、NO(一酸化窒素)が深く関わっていると考えられています。
加圧トレーニングでは、筋内の低酸素化(低酸素状況下ではNOの寿命が著しく伸びる)、代謝産物の蓄積、PHの低下などの環境悪化と、速筋線維の筋活動が複合してNOの濃度が高くなって、HGFの濃度が高くなり、筋サテライト細胞の増殖開始を強く促すと考えられています。
これに対し、成長ホルモン、IGF-Ⅰ、IL-6などは、細胞サイクルの進行を調節するので、細胞分裂の「増幅」をします。
つまり、加圧をトレーニングすることでNOの筋肉濃度が高くなり、筋サテライト細胞が増殖サイクルに入るため、筋肉を増強させる働きのある成長ホルモン、IGF-Ⅰ、IL-6の濃度上昇が効果的に細胞分裂の増幅を行い、筋肉が増強されていくという事です。